メタボリックシンドローム
飽食の時代。先進国を中心に肥満の人が増え続け、医療財政を圧迫する懸念が高まっている。心臓病や脳卒中、糖尿病などあらゆる生活習慣病の元凶だからだ。どうして太り過ぎは体に悪いのか。肥満研究の歴史はまだ浅いが、次第にそのなぞが明らかになってきた。
昨年9月、世界保健機関(WHO)が、肥満人口の増大に警鐘を鳴らした。太っているかどうかは、体重(kg)を身長(m)で2回割って算出する数値(BML肥満度指数)で判断する。世界ではおよそ6人に1人がBMI25以上、「過体重」「肥満」にあてはまる。
「日本人は肥満に弱い」と指摘するのは京都市立病院糖尿病・代謝内科の吉田俊秀部長。BMI25以上の肥満の人は、2300万人にのぼる。
日本人は、少ない食べ物から効率よくエネルギーを蓄えることができる「倹約遺伝子」を持つ人の割合が、欧米人に比べると2〜4倍も多い。省エネ型の体は清貧の時代にはよかったが、飽食の時代では健康を害することになる。欧米型の高脂肪食を取りすぎると肥満になりやすく、糖尿病などにかかりやすくなる。
人間の体の中には平均すると300〜600億個卵旨肪細胞があると言われている。この細胞の中は空洞で、ここに中性脂肪が取り込まれるようになっている。食べ過ぎや運動不足になると、余った脂肪が細胞の中に蓄えられ、直径0.2ミリと通常の20倍の大きさまで膨れあがることもある。
脂肪細胞の役目は、活動に必要なエネルギー源を蓄えることだと長年考えられてきた。だが、最近になって単なる貯蔵庫ではなく、生命維持に欠かせない様々なホルモンなどを生み出す内分泌器官であることがわかってきた。
脂肪細胞が体内に放出する物質には、血液を固める性質をもつタンパウ質であるPAHや、炎症を引き起こすTNF−α、高血圧と関係し食欲も左右するレプチンなどの物質がある。
PAト1が過剰になると血管が詰まりやすくなり、狭心症など心臓病を引き起こす。TNトαが増えすぎると、血糖を低下させる役割を持つインスリンの働きが弱まる。こうした物質は、太れば太るほど増え、糖や脂肪がうまく分解(代謝)されにく
くなり、心臓病などを引き起こす動脈硬化になりやすくなる。
メタポリツウシンドローム(代謝症候群)の治療法を開発するカギを握る物質は、実は脂肪細胞の中にある。アデイポネウテンという物質で、分泌量は他の物質の1千〜1万倍にものぼる。アディポネウテンは内臓脂肪がたまるにつれ減ってくるが、体重を1割減らすだけで、分泌量が2倍近くまで回復する可能性があることが大阪大学のグループの研究でわかってきた。
太る仕組みも次第に明らかになってきた。日本大学の研究グループは、夜10時から深夜2時にかけて分泌量が増加する「BMALl」という1日の生体リズムを制御するタンパウ質が、細胞内に脂肪をためる働きのあることをマウスの実験で突き止めた。
マウスと同じことが人間にもあてはまると、同じカロリーの食事をとっても、深夜に食べる方が太りやすくなる。
「夜遅く食べると肥満になる」。誰もがよく知っている定説は、科学的にも裏付けられようとしている。
日経新聞1/29より 抜粋要約



