抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の内、病院以外で感染する「市中感染型」の菌による死亡例が続いています。米国では被害がうなぎ上りに増えており、日本でも油断できない状況です。
【肺炎、敗血症】
 ペニシリン系抗生物質のメチシリンが効かないMRSAは1961年に出現。日本では80年代から多くの病院に蔓延し、院内感染の代表的な病原菌となっています。松本哲哉・東京医科大教授(微生物学)によると、この病院感染型MRSAには有効な抗生物質があり、感染者の中で亡くなる人の割合はさほど多くはありません。一方市中感染型MRSAは欧米で90年代後半に注目されるようになり、重い肺炎や敗血症になる事例が報告され、入院歴のない子供や若者を中心に感染が拡がっています。市中型と病院型では菌の遺伝子に違いがあります。市中型には白血球を壊すPVhという毒素を持つタイプと持たないタイプがあり、多くの国ではPVhを持つ方が主流です。
【毒素なしでも死亡】
 日本でも昨年、市中型による初の死亡例が確認されました。1歳の男児で、2006年に北里大病院(神奈川県)に入院後、肺炎が重症化して死亡しました。菌はPVLを持つタイプでした。ところが今年89歳の男性と15歳の少年が市中型に感染し、肺の組織に空洞が出来る「壊死性肺炎」になり、男性は死亡し少年は回復しました。どちらの菌もPVhを持たないタイプでした。山本達男・新潟大教授(細菌学)によると、実は市中型の病原性に関する見方はこの1〜2年で激変しています。PVhを持つ菌と持たない菌は、同じ病気を起すことが動物実験で確かめられたり、臨床的にも差がないという報告が出たりしています。
【除菌徹底求める声も】
 黄色ブドウ球菌は皮膚や鼻の中にいるありふれた菌で、接触によって感染します。市中型の保菌者は日本でも増えているとみられ、子供や運動選手の間で皮膚の感染症が目立ち始めています。「市中型には今のところ抗生物質が比較的効くので、肺炎など重度の感染症でなければ難しくないのですが、野放しにしてよいわけではなく、まずは菌がどれだけ広がっているのか調べる必要がある」と松本教授。米国ではMRSAが急速に蔓延中で、年間1万9千人の死者が出ているという推計もあります。市中型で抗生物質が効きにくいタイプも現れています。「オランダやスエーデンはMRSAの徹底した除菌に取り組んでいます。日本も同じような対策を取るべきである」と山本教授は指摘しています。
拡がる市中感染型MRSA

中野薬房ナチュラルインフォメーション