第2章 症状とツボ

肩がこる、肩が痛む







3.肩が凝る、肩が痛む
 
 私たちは日ごろ、何気なく「肩がこった」とか「肩が痛い」などといって、肩をトントン叩いたり、首をぐるぐる回したり、貼り薬を貼ったりしているものです。
 そのありふれた「肩こり」や、「肩の痛み」でも、原因や症状は実にさまざまで、数え上げればきりがありません。
 また、「肩こり」と思っていたら、いつの間にか症状がすすんで「肩の痛み」に変わっていた、ということも多いものです。
「肩こり」を大きく分けると、急性と慢性の二つになります。
 ふだん、しつけない動作、たとえば重い荷物を運んだり、長時間同じ姿勢ですわり続けていたなど。また、ストレスのかかる会議にでていたり、寒さを我慢して立っていたりすると、筋肉疲労や、血行不良のための急性の「肩こり」がおこります。
 このようなときに、保温と休養、栄養をとり、回復を計ればよいのですが、実際問題としてはそのまま無理を続け、「肩こり」を慢性化させてしまう人は多いもの。
 「肩こり」くらいたいしたことではないと、軽視しているからでしょう。
 しかし、その「肩こり」のせいで、不愉快な毎日を過ごしている人が多いのですから、バカにはできません。
 原因が分かっている急性の「肩こり」は、その原因が取り除かれれば問題はほぼ解決することになります。
 これに引き換え、慢性化した「肩こり」の場合、原因が数多く、あまりハッキリしていないだけに、手当てもなかなか大変です。
 あまりにもしつっこい「肩こり」、「肩の痛み」が続くときには、別な病気がかくされている可能性もありますから、注意しなければなりません。
 内科的には@自律神経の失調、A胃疾患、B血圧の異常、C貧血、Dホルモン系の調節異常E近視、遠視、乱視など視力の異常、F動脈硬化、G心臓病、Hビタミン欠乏など。
 外科的には@筋膜炎、A頸肩腕症候群、B頸椎変形性脊椎症などのほか、歯の噛み合わせが悪いなども関連して 「肩こり」がおこり、その範囲は大変広いものです。
 これらの病気は、ある程度の年齢になると、誰もがかかる可能性のある病気です。
 そこに、日常の悪い生活習慣や動作などが加われば、「肩こり」で悩む人がふえるのは当然かもしれません。
 ふつう、「肩こり」や「肩の痛み」を解消するのに、自分で手軽にできる方法として、「あたためる…、逆に冷やす…、針、灸、指圧、マッサージ、市販の貼り薬を貼る、塗り薬を塗る、内服薬を服用する、磁石粒を貼る、体操をする」などがあります。
 これらの方法を症状にうまく合わせて、使い分ければよいのですが、素人の人で、見当違いの手当てをしていることが結構多いものです。
 例えば、炎症のあるこりや痛みは「冷やす」のが原則で、慢性的なこりや痛みは、逆に「温める」のがよいのですが、これを反対にしている人が少なくありません。
 これでは、せっかくの手当てが逆効果になってしまいます。
一般によく用いられる市販の湿布薬には、「冷感湿布」と「温感湿布」の二種類があり、冷感湿布には患部を冷やして炎症を鎮める作用、温感湿布には血液の循環をよくする作用
がありますから、前記のとおり、炎症のあるこりや痛みには冷感湿布、慢性的なこりや痛
み、五十肩などには温感湿布が原則です。
 この際、湿布薬にかぶれ易い人は、前もってテスト、確かめてから使うか、湿布薬を貼
っておく時間を短くするか、または、バージンオイルをうすく塗っておくとか、多少面倒
でも他の方法に替えて、冷やしたり、温めたりするのがよいでしょう。
 温めるには、医薬品ではなく皮膚に直接貼る「温熱用具、温熱シップ」や、「使い捨てカイロ」、「ホットパック」などがあります。
 いずれの場合も、使用上の注意文書をよく読み、低温火傷などにならぬよう注意して使ってほしいものです。
 反対に冷やす場合には、氷を氷のうに入れたものとか、冷凍庫で冷やした不凍ゲルの製品などを使って冷やしましょう。
 また、手当ての方法もー種類だけでなく、他の方法と組み合わせて手当てをすれば、相乗効果で早くよくなるケースでも、どういうわけか一種類の方法だけにこだわって慢性化させてしまう人が見受けられますが、賢い方法とはいえません。
 もともと、「肩こり」、「肩の痛み」が慢性化する原因には、前に述べた毎日の生活動作や、生活習慣が大きな要素を占めています。運動不足、睡眠不足、悪い姿勢、目の酷使、合わない眼鏡や机、枕などがそれです。
「肩こり」、「肩の痛み」に限らず、このような悪い生活習慣を続けることが、ジワジワと、身体全体に悪影響を及ぼすことはいうまでもありません。
 その意味では、現在の「肩こり」、「肩の痛み」は、その悪影響の結果が、たまたま、弱点である肩に現われたわけです。
 これから、さらに他の部分にも病気が広がるかもしれないという、予告の信号とも考えられます。
 昔から「かぜは万病の元」といいますが、「肩こり」も同じく万病の始まりの注意信号と考えて、早め早めのお手当が大切です。
 また最近では大人ばかりか、こどもたちの間にまで肩こりが広がっています。
「まさか、子供に肩こりなんてあるはずがない…」と否定されるお母さんも多いのですが、そうとはかぎりません。
 実際に、子供たちの肩に手を当ててみると、くすぐったいのではなく、こりのため、痛くて身をすくめて逃げる子は少なくないのです。
 この際、ぜひストレスのかかっている子供たちの健康にもご注意ください。
 
漢方薬では
 漢方薬では、西洋医学上の病名にとらわれず、「証」によって、次のような処方がよ
く用いられます。
 @葛根湯(かっこんとう)
 体力がある人で、寒さとか、特定の労働のために血液の循環が悪くなったりして、熱をもつ肩こりや、首筋から背中にかけて「こり」がおこったり、頭痛がおきた場合に用いられる有名な処方です。
 風邪のひきはじめに、おなじような症状があれば「かぜ薬」として応用されるため、同じ処方でも商品名を変え、「肩こり」薬として販売されたり、「かぜ薬」として販売されているものがあります。
 A小柴胡湯(しょうさいことう)
 体力が中ぐらいの人で首の横から肩にかけて「こり」があり、胸から脇腹にかけて圧迫感がある人に用います。
 肝機能が弱っていて、解毒作用や、胃腸の働きが低下していて前記の症状が現れている人に最適です。
 B大柴胡湯(だいさいことう)
 体力がある人で、ガツチリした体格、胃部が硬くつかえ、胸から脇腹にかけて圧迫感がある人に用いる処方。
 C柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゆうこつぼれいとう)
 体力が中ぐらいの人で首の横から肩にかけて「こり」があり、神経不安、不眠、イライラなど、精神神経症状がある人に用いて効きます。
 D当帰苛薬散 (とうきしゃくやくさん)
 比較的体力が低下しており、顔色が青白く、貧血ぎみ、排尿回数は多いが、尿量は少ない傾向があり、生理異常などの症状のある女性の肩こりに。
 G加味邁遥散(かみしょうようさん)
 虚弱体質で疲れやすく、冷え性、貧血ぎみ、めまい、不眠、不安、ヒステリーぎみなどの症状のある女性、または更年期障害の人の肩二りに用いられます。