第2章 症状とツボ

8.ひざの痛み(特に内側が痛むもの)













8.ひざの痛み(全般解説)
 
 私たちのまわりには、中年を過ぎた頃から、ひざにトラブルがおこり、「痛い」「苦しい」と、悩んでいる人が少なくありません。
 一般的には男性よりも女性に多く、同じ女性でも体重の少ない人よりも、肥満ぎみの人に多いようです。
 また年齢でみると、早い人では四十代前半から出はじめます。
 最初のうちは、動作の始めや、動きの終わりに、ちょっと不快感がある程度で済んでい るので、たいした事ではない、一時的なものだろう、そのうちに良くなると思っているうち、だんだんと症状が進んできます。
 座っていて立ち上がろうとした瞬間、ひざに痛みが走り「イタタッ…」と顔をしかめて立ちすくんでしまったり、階段の昇り降りが不自由になり、特に降りるときがつらく、階段の途中で立ち往生するとか、平らなところを歩くのに、ひざが重い感じでうまく歩けな
  いなど、その症状は人によりさまざまです。
 いずれにしても、身動きがスムーズに出来なくなり、日常生活に差し支えるようになってくることは避けられません。
 このような、中年からのひざのトラブルの原因は、そのほとんどが、ひざ関節の老化によるものです。
 病院で見てもらうと、年齢からくる関節の変形が原因で起きた「変形性膝関節症」と言われる人が多いはずです。
 では、年をとると、どうしてこのような関節の変形とか痛みが起こってくるのか、ごく簡単に説明してみましょう。
 人間、年をとれば、当然ながら髪が白くなってきたり、皮膚がたるんだりするのと同じく、関節にも老化現象がおこってきます。
 ひざの関節は、図のように大腿骨の下端と脛骨の上端で関節ができていますが、股関節などと違って、非常に不安定な形の組み合わせになっているのです。
 それが安定してスムーズに動くためには、骨と骨を連結している靭帯や、大きく包んでいる関節包、ひざを囲む筋肉(大腿四頭筋、大腿二頭筋、半腱様筋など)の力が強くなければなりません。
 これらの筋肉は、足を動かしたり、ひざの屈伸をするだけでなく、ひざにかかる体重を分散して、無理なく負担させる役目をもっています。
 また、関節面のすき間にはさまって、くさびのような働きやクッションの役割を果たしている、三日月の形をした軟骨の板(半月板)もしっかりしている必要があります。
 さらに、骨の端は軟骨におおわれていますが、軟骨は表面が平らですべりやすく、適当なかたさと弾力があって、ショックを吸収する力をもっているのですが、この軟骨には、もともと神経が通っていないので、軟骨同士がぶつかり合っても、痛みを感じることはありません。
 ところで、年とともに関節の老化が進んできて、軟骨の表面のすべりよさや弾力性が減り、ひざを囲む筋肉や靭帯の力が弱まってくると、ひざにかかる力が関節面全体に分散されず、ある特定の部分に無理な力がかかってきます。
 その結果、そこの部分の軟骨がはげ落ち、その下の骨がでてくると、そこには神経が通っているので、痛みを感じることになるわけです。
 ひざの内側にくることが多いのですが、軟骨がすり減るにつれて、その下の骨も減ってくることになり、だんだんと足の形がいわゆる「ガニマタ」になり、肩をふって歩くようになる人も多くなります。
 また、痛みが強くでるようになると、ただでさえ老化して硬くなり始めているひざの周囲の筋肉が、さらに縮んで硬くなってきます。(硬縮) その辺を指で押さえてみると、「こりこり」と感じて、ツーンと痛みが身体の芯までとおるような「コリ」、つまり「圧痛点」が何カ所かあることがわかります。
 この場合、「圧痛点」はひざの周辺だけではなく、まったく関係ないと思われるような離れた腰や大腿の方にまで及んでいることが多いのでご注意下さい。
 ひざが悪いと、歩くのに身体のバランスをとるために、あちこちの筋肉が普段と違った動き方をして、思いがけない遠いところに「圧痛点」がでるのです。
 この、ちょっと気づかない部位にある「圧痛点」を含めて、痛みに伴って起こった「こり」をゆるめてやることにより、ひざの周辺の緊張がとけ、血行が盛んになって炎症が治まり、痛みがとれる方向にむかうことになります。
 もちろん、痛みが治まったからと言って、一度はがれ落ちてしまった軟骨が元に戻るわけではありませんが、ある程度の時間をかけてひざをいたわっていると、軟骨の下から現れた骨が次第にかたさを増し、表面がなめらかになる一方、痛さに対する感じ方も鈍ってきて、それほど苦痛に感じなくなってきます。
 しかし、体重を減らすこと、階段の昇り降りや、正座、長距離歩行をしないこと、足腰を冷やさないこと、老化を少しでも遅らす生活をするなどの養生を心がけていないと、再び痛みだしたり、落ち着いたりの一進一退をくり返すことになり、痛みのために歩けなくなる人もでてくるので油断はできません。
 また、ひざを支えている筋肉、とくに、太ももの前面にある大腿四頭筋を弱らせないようにすることも大切で、そのためのリハビリとして、あおむけに寝たまま、足をまっすぐに伸ばし、ひざの関節を動かさずに、20度〜30度までゆっくり上げて止め、下ろす運動もよく行われます。
 さらに根本的には、体重が多い人の場合には、まず、なによりも減量を心がけなくてはなりません。
 簡単なようでも、いろいろと言い訳が多くて実行できず、投げ出してしまいがちなのが減量ですが、ぜひ実行してください。
 腰痛の項でも述べたように、医師から「体重を減らさないとダメだ」といわれているのに、いろいろの理由をつけ、減量の努力をしない方が多いのですが、これではいつになっても「ひざの痛み」とはサヨナラできません。
 また「ひざの痛み」で悩む年配の方の多くは、動脈硬化、高血圧、心臓病、糖尿病、肝臓病などの病気もあり、これらの対策のためにも、この際心機一転して健康のための安全なダイエットを心がけてほしいものです。
 この本の著者らは、かねてから健康にゃせるための、安全な「ダイエット」にっいても種々研究を重ねておりますので、ぜひご相談ください。
漢方薬では
 漢方薬では、西洋医学上の病名にとらわれず、「証」によって、次のような処方がよく用いられます。
 @防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
 体力があまりない人で、身体に水分の停滞があり、身体が重だるく、肥満ぎみの、いわゆる水ぶとり体質の人に用います。
 これらの人は色白で、汗をかきやすく、浮腫や尿量減少を伴うのが普通で、ひざに痛みをおこす「変形性膝関節症」 にいちばん多用される漢方処方です。
 しかし前に述べたように、ひざの痛みをおこす「変形性膝関節症」 の予防には「太らない」 ことが大切な条件です。
 もちろん、現在既に太ってしまっている人は、今からでも、一日も早く「やせる」努力をしなければなりません。
 漢方薬を服用し、ツボ療法をするのに加えて、やせるための食養生を守ることを、三位一体として実行する必要があります。
 A越脾加朮湯(えつぴかじゅつとう)
 体力がある人で、身体に水分の停滞があり、のどの渇きが強く、汗がじとじとと出てくる、弾力性のある浮腫があるなどの状態があり、尿量減少し、関節にハレがあるような人に用いられます。
 B桂茯加ヨクイニン(けいしぶくりようがんかよくいにん)
 体力が中ぐらいか、それ以上で、下が冷え、上がのぼせるタイプで、顔色はよく見ぇることが多いような人で、左下腹部に抵抗と庄痛があり、肩こり、めまい、のぼせなどのある人に用います。
桂枝茯苓丸だけでなく、ヨクイニンを加えることで効果はさらに強まるわけです。
 変形性膝関節症は、もともと老人性変化によるものが大半ですから、完治させることは無理としても、日常の起居動作に不自由のない、いわゆる臨床的治癒の状態に近づけることをとりあえずの目標としましょう。
 また、そうすることが再発を防ぐことにもなりますので、あきらめずに手当を続けて下さい。